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猫が水をよく飲むのは病気?考えられる5つの病気と適切な飲水量|PETTENA
「最近、愛猫が水をガブガブ飲むようになった…これって大丈夫?」と心配になっていませんか?実は猫の飲水量の変化は、重大な病気のサインである可能性があります。今回は、猫が水をよく飲むときに疑うべき5つの病気、病気以外の理由、1日の飲水量について詳しく解説します。
猫の正常な飲水量とは?
一般的な基準(体重1kgあたり50〜70ml/日)
健康な猫の1日の適正な水分摂取量は、体重1kgあたり約45〜70mlが目安です。例えば、4kgの猫なら200〜280ml程度が正常範囲と言えるでしょう。
ただし、この数字にはドライフードに含まれる水分(約10%)も含まれるため、実際に飲み水として摂取する量はもう少し少なくなります。また、夏場や暖房の効いた冬場は、季節によっても飲水量が変動することもあります。
日本獣医師会や研究所などのデータ引用
一般社団法人日本獣医師会のガイドラインでは、猫の1日の水分必要量を体重1kgあたり47~70mlとしています。 (フードから摂る水分も含む)
また、NPO法人小動物疾患研究所のコラムによると、現代の獣医学において猫の1日の水分必要量は、環境や年齢、健康状態などによって異なりますが、一般的には体重1kgあたり50〜60mlとされています。これは、おおよそエネルギー必要量に相当すると考えられています。
一方で、統合獣医療(ホリスティックな視点)から見ると、健康を維持するためには、これよりもさらに10〜20%多く水分を摂取するのが理想的だと言われています。
猫が1日に必要な水分量(フードから摂る水分含む)
体重(kg) | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
水分量(ml) | 140 | 190 | 240 | 280 | 320 | 360 | 400 | 440 | 470 |
これらのデータを参考にすると、体重×45mlを下回る場合は水分不足、逆に体重×70mlを超える場合は多飲の可能性があると考えられます。ただし、ウェットフードを主食にしている猫は、それだけで多くの水分を摂取しているため、飲水量が少なめになる傾向があります。
どこからが「多飲」とされるかの明確な目安
獣医療の現場では、体重1kgあたり100ml/日を超える飲水量が持続する場合、明らかな多飲と判断されます。例えば、4kgの猫が1日に400ml以上の水を飲み続けるようなら、何らかの疾患が隠れている可能性が高くなります。
急に水を飲む量が増えたり、水皿を何度も補充しなければならなかったりする変化に気づいたら、たとえ100ml/kgに達していなくても、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
特に7歳以上のシニア猫の場合は、腎臓病や糖尿病などのリスクが高まるため、飲水量のモニタリングがより重要になってきます。
猫が水をよく飲むときに疑われる病気

慢性腎不全
猫の慢性腎不全は、シニア猫の代表的な病気の一つで、実に10歳以上の猫の約30%がかかると言われています。腎臓は体の老廃物を尿として排出する重要な役割を担っていますが、機能が低下すると、濃縮された尿を作れなくなり、薄い尿を大量に作ろうとします。これが多飲多尿という症状として現れるのです。
実は腎臓は沈黙の臓器と呼ばれ、機能の70%以上が失われるまで明らかな症状が出ないことが特徴です。だからこそ、飲水量の変化は貴重な早期発見のチャンスなのです。
慢性腎不全の初期症状
・水を飲む量が明らかに増えた
・トイレの回数が増え、尿の量も多い
・毛づやが悪くなり、体重が徐々に減少する
・口臭がアンモニア臭っぽくなる
腎不全は進行性の病気ですが、早期に適切な療法食や水分補給を始めることで、進行を遅らせることができます。気になる症状があれば、迷わず血液検査を受けることをおすすめします。
糖尿病
ごはんはよく食べるのに、なぜか痩せてきた…そんな状態が続く場合、猫の糖尿病を疑う必要があります。糖尿病になると、血液中の糖分をうまく利用できなくなるため、体はそれを尿として排出しようとします。
この時、糖と一緒に大量の水分も出て行ってしまうため、猫は喉が渇いてたくさんの水を飲むようになるのです。
糖尿病の特徴的な症状
・水を飲む量が急激に増える
・トイレの回数が増え、尿の量も多い
・食欲旺盛なのに体重が減る
・後ろ足が弱くなり、うまく歩けなくなる
特に肥満気味の猫は糖尿病リスクが高まります。糖尿病は放置すると命に関わりますが、適切なインスリン治療や食事管理でコントロール可能な病気です。
子宮蓄膿症
避妊手術を受けていないメス猫の場合、子宮蓄膿症という命に関わる病気の可能性も考慮する必要があります。これは子宮内に膿がたまる病気で、特に高齢の未避妊猫に多く見られます。子宮蓄膿症になると、細菌から出る毒素の影響で多飲多尿の症状が現れることがあります。
子宮蓄膿症の特徴的な症状
・水を飲む量が急に増える
・陰部から膿のような分泌物が出る
・お腹が張ってきた
・食欲不振や発熱、元気がなくなる
特に危険なのは、子宮の出口が閉じてしまう閉鎖型で、外見上の変化が少ないため気づきにくい点です。子宮蓄膿症は緊急を要する病気で、放置すると敗血症を起こす可能性があります。治療には緊急手術が必要になることがほとんどです。
甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症 など
甲状腺機能亢進症は、主に中高齢の猫に多い病気で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が異常に高まり、多飲多尿の症状が現れます。特徴としては、食欲旺盛なのに体重が減る、落ち着きがなくなる、毛が薄くなるなどがあります。
また、高カルシウム血症も多飲の原因になります。これは腫瘍や腎不全、ビタミンD中毒など様々な原因で起こり得ます。その他、肝臓病や尿崩症など、内分泌系の異常でも飲水量が増えることがあります。
病気以外でも猫が水をたくさん飲む理由

ごはんの種類で変わる飲水量
フードの水分量と猫の水分摂取行動
猫の飲水量は、与えているフードの種類によって大きく変わります。ドライフードの水分含有量は約10%なのに対し、ウェットフードは約75%もの水分を含んでいます。
つまり、ウェットフードを主食にしている猫は、食事から多くの水分を摂取できるため、飲み水からの必要量が自然と少なくなるのです。
特にシニア猫の場合、ドライフードのみだと水分不足になりがちなので、ウェットフードを混ぜるなどして水分補給をサポートしてあげると良いでしょう。
食事と水分摂取のバランスについて
完全なドライフードの場合、必要な水分のほとんどを飲み水から摂取しなければなりません。例えば、4kgの猫がドライフードのみを食べている場合、1日に200〜280mlの水を飲む必要があります。
夏や冬のエアコンで乾燥している可能性も
室内の湿度が猫に与える影響
猫は本来、砂漠出身の動物ですが、現代の家猫は完全な室内飼いが多く、エアコンによる乾燥に敏感になっています。
夏の冷房や冬の暖房は、室内の湿度を30%以下まで下げることがあります。このような乾燥した環境では、猫の体からも水分が奪われやすく、自然と水を飲む量が増えてしまうのです。特に長毛種やシニア猫は、乾燥の影響を受けやすいので注意が必要です。
新しい環境や来客などストレスが原因の場合も
行動の変化をどう見極めるか
「引っ越し後から」「新しいペットを迎えてから」など、環境の変化をきっかけに猫の飲水量が増えることがあります。これは、ストレスが原因で一時的に多飲になるためです。
ストレスによる多飲の場合、通常は一時的なもので、環境に慣れると自然に落ち着くことがほとんどです。ただし、2週間以上続く場合や、食欲不振や毛づくろいの異常など他の症状を伴う場合は、動物病院に相談することをおすすめします。
猫の飲水チェックと記録のしかた

メモリ付きボウルの利用
正確な飲水量を測るには、メモリ付きの水容器を使うのが一番簡単です。ペットショップで売られている計量可能な給水ボウルや、キッチン用の計量カップを代用しても良いでしょう。
毎朝決まった量の水を入れ、24時間後に残量をチェックします。これを3~5日続けると、平均的な飲水量が把握できます。
スマホ連動型自動給水器の活用
スマホ連動型自動給水器は、猫の飲水量を自動計測できる便利アイテムです。Wi-Fi接続で専用アプリにデータを送信し、日々の飲水量をグラフ化しています。異常な増減があれば通知が届くので、病気の早期発見に役立ちます。
水の減りを手動で測る手間が省け、正確なデータを継続的に記録できます。陶器製やステンレス製など衛生面に配慮したタイプを選ぶとより安心です。
猫用トイレ砂の固まったおしっこからチェック
吸収型のトイレ砂を使っている場合、固まった尿の塊の大きさでおおよその尿量が分かります。健康な猫の1回の尿量は、体重1kgあたり約10~15mlが目安です。4kgの猫なら、40~60ml程度(ゴルフボール~テニスボール大)が正常範囲です。
「最近、尿の塊が明らかに大きくなった」「1日に5個以上も固まる」という場合は、多尿の可能性があります。
猫の年齢・体質別で見る飲水量の違い

老猫ほど腎臓への負担が大きい
7歳を過ぎたシニア猫の場合、飲水量の変化は健康のバロメーターとして特に重要です。加齢とともに腎機能が低下すると、尿を濃縮する力が弱まり、体内の老廃物を排出するために多くの水分が必要になります。このため、気づかないうちに慢性腎不全が進行しているケースも少なくありません。
特に12歳以上の超老猫では、腎臓の機能がさらに低下するため、体重1kgあたり60mlを超える飲水量が続く場合や、水を飲む量が急激に増えた時は、早めに動物病院でSDMA検査を含む血液検査を受けることをおすすめします。
若い猫の特徴
- 腎機能が正常で、少量の濃縮尿で老廃物を排出できる
- 活発に動くため、運動後や食事後に一時的に水を多く飲む傾向がある
- ドライフード中心の食事でも、比較的脱水になりにくい
高齢猫の特徴
- 腎臓の尿濃縮力が低下し、薄い尿を大量に作るため自然と水を飲む量が増える
- 代謝が落ちて喉の渇きを感じにくくなり、気づかないうちに脱水状態になるリスクが高い
- 認知機能の低下で水飲み場の場所を忘れてしまうことがある
若い頃はあまり水を飲まなかったのに、年を取ってから急に飲むようになったという変化は、単なる加齢現象ではなく、重大な病気のサインかもしれません。
シニア猫の場合は、定期的な健康診断と併せて、日頃から飲水量をチェックする習慣をつけることが大切です。
去勢・避妊後、飲水量が変わることも?
「去勢手術をしたら、水を飲む量が増えた気がする」というご相談をよく耳にします。実はこれは、手術によるホルモンバランスの変化が関係している可能性があります。特にオス猫の場合、去勢後には次のような変化が現れやすい傾向があります。
代謝が10~20%低下し、運動量が減ることで全体的な水分要求量が減少する
食欲が増す一方で、尿路結石のリスクが高まるため、意識的に水分を摂取させる必要がある
ホルモンの変化により、一時的に水を飲む量が増減することがある
避妊手術後のメス猫では、逆に水を飲む量が一時的に減るケースもあります。これは、妊娠の可能性がなくなったことで、体が水分を保持しようとする必要が減ったためと考えられます。いずれの場合も、手術後2~3ヶ月かけて徐々に落ち着いてくるのが一般的です。
猫の飲水に関するよくある質問
Q:水の飲みすぎで腎臓に負担はかかる?
健康な猫にとって水を飲むことは体に負担ではありません。むしろ腎臓の働きが悪くなっているときには、水分をしっかりとることがとても大切です。飲みすぎを心配するよりも、異常が続くようなら原因を調べましょう。
Q:ちゅ〜るは水分補給になりますか?
はい、ちゅ〜るのようなペーストタイプのおやつには水分が含まれているので、水分補給の一助になります。ただし塩分やカロリーもあるため、与えすぎには注意しましょう。水をあまり飲まない子への補助として活用すると良いですね。
Q:猫が水を飲みすぎているかどうかはどう見分ける?
一日に何度も水を飲みに行ったり、飲む量が急に増えた、おしっこの量が増えたなどの変化があるときは「飲みすぎ」のサインかもしれません。普段との違いに早く気づくことが、病気の早期発見にもつながります。
Q:猫の1日の水の適量ってどれくらい?
猫の適切な飲水量は、体重1kgあたり1日45〜70ml程度が目安です。たとえば体重4kgの猫なら180〜240ml程度です。ただしウェットフード中心の子は水分を食事から摂っているので、飲水量が少なくても問題ないこともあります。
まとめ
猫が水をよく飲む場合、慢性腎不全や糖尿病など5つの病気が疑われます。特にシニア猫は腎機能の低下に注意が必要で、体重1kgあたり45-70mlが適正量の目安です。去勢後や季節の変わり目も飲水量が変化しやすい時期。