犬のてんかん発作とは?症状・原因・対処法・治療費までやさしく解説|PETTENA
犬のてんかん
パートナーが突然倒れてガクガク...この瞬間、飼い主の心臓は止まりそうになりますよね。でも大丈夫、適切な知識があればあなたは愛犬を守れます。この記事では「その時」の正しい対処法から、意外と知られていない発作の前兆サイン、治療費の節約術まで、愛犬の命を守るための知識を全てお伝えします。

犬のてんかんとは?

犬のてんかん発作

てんかんの定義とメカニズム

犬のてんかんは、脳内の神経細胞が異常に興奮することで起こる発作性の神経疾患です。人間と同じように、犬も突然意識を失ったり、体がけいれんしたりする発作を繰り返すことが特徴です。実に100頭に1~5頭の割合で発症すると言われており、特に若齢から中年期の犬によく見られます。

てんかんのメカニズムを簡単に説明すると、通常はバランスよく働いている脳内の興奮性神経と抑制性神経のバランスが崩れ、電気信号が過剰に放出される状態です。まるで脳内で「電気嵐」が起きているようなイメージです。この異常放電が脳の一部で起これば部分発作に、広範囲に及ぶと全般発作になります。

特発性てんかんと構造的てんかんの違い

特発性てんかんはMRIなどの検査をしても脳に明らかな異常が見つからないタイプです。遺伝的要因が関与していると考えられ、1~5歳で初めて発作が起きるケースが多いです。てんかんと診断される犬の約50~60%がこのタイプです。

構造的てんかんは脳腫瘍、外傷、脳炎、奇形など、脳の構造的な問題が原因で起こるタイプです。高齢犬で初めて発作が起きた場合、この可能性が高まります。

「うちの子はどっちなの?」と気になりますよね。実は、特発性か構造的かを判断するには、血液検査やMRI、脳脊髄液検査などが必要になります。

特に6歳以上で初めて発作が起きた場合、脳腫瘍などの可能性も考慮して詳しい検査を受けることが推奨されます。

てんかんの主な症状とチェックリスト

実はてんかん発作には様々なタイプがあり、全身がけいれんするイメージだけでは見逃してしまうサインもあるんです。犬のてんかん発作で見られる具体的な症状を詳しくご説明します。
てんかんの症状

全般発作の特徴

最も分かりやすいタイプがこの全般発作です。突然「バタン」と倒れ、全身が硬直した後、ガクガクとけいれんする様子が見られます。具体的には次のような症状が現れます。

🐶意識を完全に失い、呼びかけに反応しなくなる
🐶10~30秒くらい四肢が棒のように突っ張る
🐶その後、四肢をバタバタさせるようなリズミカルなけいれん
🐶口から泡状のよだれが出る
🐶無意識のうちに排尿や排便をしてしまうこともある
🐶瞳孔が開き、光に反応しなくなる
🐶呼吸が荒くなったり、一時的に止まるように見えることもある

「発作中に愛犬が苦しそうで見ていられない」と感じる飼い主さんも多いのですが、実は発作中の犬は意識がないため、痛みや苦しみを感じていないと考えられています。通常1~2分で自然に収まりますが、初めて見るととても長く感じるものです。

部分発作の微妙なサイン

部分発作は見落とされがちですが、実は重要なサインです。以下のような症状が見られたら注意が必要です。

🐶まぶたや口角など顔面の一部がピクピクする
🐶前足や後ろ足だけがリズミカルに動く
🐶「フライバイティング」と呼ばれる、空中の虫を捕まえるような動作
🐶理由なく急に吠えたり、怯えたような行動を取る
🐶同じ場所をぐるぐる回り続ける
🐶特定の部位を執拗に舐めたり噛んだりする

「うちの子、最近変な仕草をするな」と思ったら、スマホで動画を撮っておくと獣医師の診断に役立ちます。部分発作は一見「ただの癖」のように見えることもあるので、注意深く観察することが大切です。

非定型発作のサイン

「けいれん=てんかん」と思いがちですが、以下のような症状も発作の可能性があります。

🐶欠神発作:突然動作が止まり、ボーッとする
🐶自律神経発作:よだれが急に増える、嘔吐、瞳孔の大きさが変わる
🐶感覚性発作:明らかな原因がないのに痛がる、特定の部位が痒そう
🐶行動異常:突然パニックになる、飼い主にまとわりつく、見えないものに吠える

特に高齢犬の場合、「認知症の症状かな?」と誤解されることも少なくありません。夜中に突然吠え出す、方向感覚を失うなどの症状は、実はてんかん発作の可能性もあるのです。

発作後の状態の観察ポイント

発作が収まった後の30分~数時間は「ポストイクタル期」と呼ばれ、以下のような変化が見られることがあります。

🐶方向感覚がなくなり、よく知っている場所でも迷子のように見える
🐶ふらついてまっすぐ歩けない(酔っぱらいのような歩様)
🐶一時的に視力が低下したように物にぶつかる
🐶異常に喉が渇いたように水を飲みたがる
🐶食欲が異常に増す
🐶ぐったりして深い眠りにつく
🐶飼い主のことが一時的に分からなくなる

この時期は犬も混乱している状態ですので、優しく見守ってあげることが大切です。無理に抱き上げたり、食べ物を与えたりせず、静かな環境で休ませてあげましょう。

危険なサインのチェックリスト

以下のような症状が見られたら、すぐに動物病院に連絡してください。

🐶発作が5分以上続いている
🐶24時間以内に2回以上発作が起きている
🐶発作と発作の間に意識が完全に回復しない
🐶けいれん後に呼吸がおかしい
🐶発作後に体温が39.5℃以上ある
🐶青色や白色に歯茎の色が変わる
🐶けいれんが治まったのに起き上がれない

特に長時間続く発作や短時間で繰り返す発作は命に関わることもある緊急事態です。深夜や休日でも、すぐに動物病院か救急病院に連絡しましょう。

犬のてんかんの主な原因と発症しやすい犬種

どうしてうちの子がてんかんに?と疑問に思う飼い主さんは多いでしょう。実は犬のてんかん、特に若年性てんかんには遺伝的要因が大きく関わっていることが分かっています。
発症しやすいビーグル

遺伝性てんかんの特徴と発症しやすい犬種

特発性てんかんの発症には、遺伝的素因が強く関与しています。以下の犬種は、特にてんかん発症率が高いことが国内外の研究で明らかになっています。

ビーグル
てんかん発症率が際立って高く、ある調査ではビーグルの約9%がてんかんを発症すると報告されています。1~3歳での発症が多く、遺伝的要素が強く疑われています。

ダックスフント
特にミニチュア・ダックスフントで発症例が多く、興奮しやすい性格も影響している可能性があります。ダックスのてんかんは比較的コントロールしやすい傾向があります。

ゴールデン・レトリーバー&ラブラドール・レトリーバー
大型犬の中でも発症率が高く、ゴールデンレトリーバーでは特定の遺伝子変異が確認されています。2~5歳で初発作が見られることが多いです。

ボーダー・コリー
作業意欲が非常に高いため、過度の興奮やストレスが発作の引き金になるケースが見られます。作業犬としてのストレス管理が重要です。

シェルティー(シェットランド・シープドッグ)
神経質な性格が影響している可能性があり、音への過敏反応が発作を誘発することもあります。

バーニーズ・マウンテン・ドッグ
遺伝性てんかんの研究が進んでいる犬種で、特定の血統に発症が集中する傾向があります。

アイリッシュ・セッター
若年性てんかんの発症率が高く、6ヶ月~3歳までに初発作が出るケースが多く見られます。

ミックス犬の場合はどうなの?と心配される飼い主さんもいますが、純血種に限らずミックス犬も発症する可能性があります。特に上記の犬種の血が入っている場合や、親犬や兄弟犬にてんかんの病歴がある場合は注意が必要です。

遺伝的素因がある犬の場合、1~5歳の間に初めての発作が起きることが多いため、この時期は特に注意深く観察してあげましょう。

構造的てんかんの原因となる脳の異常

脳の物理的な異常が原因で起こる構造的てんかんには、以下のような要因が考えられます。

脳腫瘍
高齢犬のてんかんの主要な原因の一つです。特に6歳以上で初めて発作が起きた場合、脳腫瘍の可能性を考慮する必要があります。腫瘍の種類や位置によって症状が異なります。

頭部外傷
交通事故や高い場所からの転落などによる頭部打撲が原因で、数ヶ月~数年後にてんかんが発症することがあります。受傷直後は異常がなくても、後から症状が現れることがあるので注意が必要です。

脳炎
免疫介在性脳炎や感染性脳炎が原因でてんかんが引き起こされることがあります。発熱や行動変化を伴うことが特徴です。

水頭症
チワワやトイプードルなどの小型犬に多い先天性の疾患で、脳脊髄液が過剰に溜まることで脳が圧迫され、てんかん発作を引き起こします。

脳血管障害
人間と同じように、犬も脳梗塞や脳出血を起こすことがあります。突然の発作とともに、片側の麻痺や意識障害が見られることが特徴です。

先天性奇形
生まれつきの脳の形成異常が原因で、若年期からてんかん症状が現れることがあります。

6歳を過ぎて初めて発作が起きたり、発作以外にも旋回運動や視力障害などの神経症状があったりする場合は、これらの構造的てんかんの可能性が高くなります。MRI検査などで脳の状態を詳しく調べる必要があるでしょう。

発作を誘発する要因と対策

遺伝的素因がある犬でも、以下のような環境要因で発作が誘発されることがあります。

ストレス
雷や花火の音、環境の変化などが発作の引き金になることがあります。ストレス要因を可能な限り排除し、安心できる環境を整えてあげることが大切です。

睡眠不足
十分な休息が取れていないと、発作閾値が下がってしまうことがあります。特に子犬期や老犬期は、質の良い睡眠をたっぷり取らせてあげましょう。

ホルモンの変化
メス犬では発情期に発作が起きやすくなる傾向があります。避妊手術によって発作頻度が減少するケースもありますが、個体差があるため獣医師とよく相談する必要があります。

光刺激
テレビやゲームの画面の点滅、日光の反射などが発作を誘発する光感受性てんかんの犬もいます。このような場合は、刺激となる光を避ける配慮が必要です。

代謝異常
低血糖や電解質バランスの乱れが発作を引き起こすことがあります。特に小型犬は空腹時間が長くなりすぎないように注意しましょう。

メス犬の場合、発情周期に伴うホルモン変動が発作の誘因となることがあるため、避妊手術によって発作頻度が減少する可能性があります。

ただし、手術そのものがてんかんを治すわけではなく、あくまで補助的な効果と考えるべきです。手術のタイミングやリスクについては、必ずかかりつけの獣医師とじっくり相談してください。

発作が起きたときの正しい対処法

てんかんの対処法

飼い主が絶対にしてはいけない3つのこと

体を抑えつけない
発作中の犬は力が非常に強く、無理に押さえつけようとするとお互いに怪我をする危険があります。「じっとさせなきゃ」と思わず、安全な場所で自然に収まるのを待ちましょう。

口の中に手を入れない
「舌を噛み切るのでは?」と心配になりますが、犬は舌を噛み切ることはほとんどありません。むしろ飼い主さんが噛まれて大けがをする危険が高いです。

大声で名前を呼んだり揺さぶったりしない
刺激を与えると発作が長引く可能性があります。静かに見守ることが最も大切です。

安全確保のための5ステップ

愛犬が突然てんかん発作を起こした時、飼い主さんが適切に対処することで、愛犬を危険から守ることができます。

発作中の犬は無意識に激しく動くため、周囲の危険物をすぐに取り除きましょう。家具の角や階段の近くにいる場合は、クッションや毛布で頭部を保護しながら安全な場所に移動させます。発作中は体温が急上昇しやすいため、夏場ならクーラーを入れ、冬場でも暖めすぎないように室温調整が必要です。カーテンを閉め、テレビや音楽を消すことで、光や音による刺激を減らすことも大切です。多頭飼いの場合は、他のペットがパニックを起こして攻撃してくる可能性があるため、すぐに別室に移動させましょう。

発作の持続時間は診断の重要な手がかりになります。スマートフォンのストップウォッチ機能を使って、発作が始まった正確な時間と終了時間を記録してください。5分以上発作が続く場合は重積発作の可能性があるため、すぐに動物病院に連絡する必要があります。

発作中の動画撮影の注意点

撮影する際は、全身と顔の表情が分かる角度から、発作の始まりから終わりまでの全過程を記録しましょう。10秒以上の動画が理想的で、夜間の場合は照明をつけて鮮明に撮影します。

発作前後の様子も忘れずに記録し、可能であれば発作が始まる直前の行動も撮影できると良いでしょう。これらの動画は後で獣医師に見せることで、より正確な診断と適切な治療方針の決定に役立ちます。

動画を撮影する際、フラッシュ撮影は避け、愛犬に触れながらの撮影も控えましょう。発作中の犬は意識がない状態なので、無理に体勢を変えたり抑えつけたりするのは危険です。あくまで自然な発作の様子を記録することを心がけてください。

撮影した動画は、日付と時間をメモしておき、症状の変化を比較できるように整理しておくと良いでしょう。

てんかんの診断と検査方法

てんかんの検査

初診前に準備しておくと便利なもの

初めてのことで不安になるかもしれませんが、適切な準備をしておけばスムーズに診断が進みます。診察の際には、発作が起きた日時や持続時間、具体的な様子などを詳細に記録したメモを持参すると良いでしょう。

特にスマートフォンで撮影した発作時の動画は診断の大きな手がかりになりますので、可能な限り撮影しておくことをおすすめします。発作の全過程が分かるように、始まりから終わりまで、そして回復するまでの様子を記録しておくと理想的です。

獣医さんでの診断の流れ

獣医師からは初めての発作がいつだったか、これまでに何回くらい発作が起きたか、1回の発作がどのくらい続くかなど、さまざまな質問があります。発作の前後に特徴的な行動があったか、家族にてんかんの犬がいないか、発作の引き金になりそうな出来事があったかなども聞かれるでしょう。これらの質問にスムーズに答えられるよう、事前にメモをまとめておくと診察がスムーズに進みます。

検査は段階的に進められ、まずは血液検査や尿検査、レントゲン検査などの基本検査が行われます。

血液検査では肝機能や血糖値、電解質バランスなどを調べ、てんかん以外の病気がないかを確認します。

尿検査では腎機能や代謝異常、尿路感染症の有無をチェックします。レントゲン検査では胸部や腹部の異常、特に高齢犬では腫瘍の有無を確認します。

これらの基本検査で異常が見つからない場合や、さらに詳しく調べる必要がある場合には、MRI検査や脳脊髄液検査、脳波検査などの精密検査が検討されます。

MRI検査は脳の詳細な構造を画像化し、腫瘍や奇形、炎症などを調べるために行われますが、全身麻酔が必要なためリスク管理が重要です。高解像度のMRIが可能な専門病院での実施が望ましいでしょう。

特に6歳以上で初めて発作が起きた場合や、発作以外に神経症状が見られる場合、発作のパターンが変わってきた場合、薬物治療に反応が悪い場合などは、MRI検査が特に重要になります。

脳脊髄液検査では脳や脊髄の周囲の液体を採取し、炎症や感染の有無を調べます。脳波検査は脳の電気活動を記録し、異常放電の有無を確認しますが、動物病院によっては実施できない場合もあります。

検査費用の目安

検査費用は基本検査で5,000~15,000円程度、精密検査で30,000~100,000円程度が目安です。

高額になることもあるため、ペット保険の活用や大学病院・専門機関の利用など、費用負担を軽減する方法も検討すると良いでしょう。検査の優先順位をつけ、かかりつけ医と相談しながら必要な検査を絞り込んでいくことも大切です。特に高齢犬の場合、全身麻酔のリスクと検査のメリットを慎重に天秤にかける必要があります。

治療方法と薬について

犬のてんかんの治療

抗てんかん薬の種類と副作用

薬剤名 主な副作用 費用(月額)
フェノバルビタール 肝臓負担・多飲多尿 3,000~5,000円
臭化カリウム 胃腸障害・皮膚トラブル 2,000~4,000円
ゾニサミド 食欲不振・ふらつき 5,000~8,000円
主に使用される薬剤は、フェノバルビタール、臭化カリウム、ゾニサミドなどがあります。

フェノバルビタールは第一選択薬としてよく処方され、効果が高いのが特徴ですが、肝臓への負担や多飲多尿、食欲増進などの副作用がみられることがあります。

臭化カリウムは肝臓に優しい反面、効果が現れるまでに時間がかかり、胃腸障害や皮膚トラブルを引き起こす可能性があります。

ゾニサミドは副作用が少ないとされていますが、食欲不振やふらつきが生じるケースもあります。

これらの薬を処方される際、投与初期にはふらつきや眠気、食欲の変化などが現れることがありますが、多くの場合、2~3週間で体が慣れてきます。ただし、黄疸や極端な食欲不振、持続的なふらつきなどがみられた場合はすぐに獣医師に相談してください。薬の効果を最大限に引き出すためには、決められた時間に正確に投与することが大切です。

治療期間・再発リスクの考え方

てんかん治療は長期戦になることが多いため、飼い主さんには根気強さが求められます。

一般的に、抗てんかん薬は発作が完全に止まってからも最低1~2年間は継続する必要があります。治療期間中は定期的な血液検査を行い、薬の効果や副作用をモニタリングします。

発作の原因や犬の年齢によって異なりますが、適切に管理された場合、多くの犬が普通の生活を送ることができます。

治療を始めてから発作が完全に止まるまでには、通常数週間から数ヶ月かかります。焦らずに効果を待つ姿勢が大切です。薬の調整は必ず獣医師の指導のもとで行い、自己判断で量を変えたり中止したりしないでください。

特に注意が必要なのは、発作が止まったからといって突然薬をやめてしまうことです。これは反跳性発作と呼ばれる重篤な発作を引き起こす危険性があります。減量や中止を考える場合は、必ず獣医師と相談しながら、数ヶ月かけてゆっくりと進めていきます。

生活管理と並行した治療

薬物療法と並行して、日常生活の管理も非常に重要です。まず心がけたいのは、ストレスを最小限に抑えた生活環境を整えることです。具体的には、以下のようなポイントに注意しましょう。

食事時間と睡眠時間を一定に、規則正しい生活リズムを維持する
激しい遊びは控えめにして、過度な興奮を避ける
ストレスの原因となる大きな音や環境変化を最小限に
適度な運動で健康的な体を維持する
バランスの取れた食事で体調を整える

特に、睡眠不足は発作の引き金になりやすいので、愛犬が十分に休める環境を確保してください。また、体温調節にも気を配り、夏場の暑さや冬場の急激な温度変化にも注意が必要です。

発作記録ノート・アプリの活用

治療を効果的に進めるためには、発作の記録をしっかりと取ることが欠かせません。最近では、ペット用の健康管理アプリも充実しており、発作の記録や薬の管理に活用できます。

記録する主な項目としては、発作が起きた日時、持続時間、発作の種類、発作前後の様子、薬の服用時間と量、その日の特別な出来事が挙げられます。

発作記録をつけると、発作のパターンや頻度を客観的に把握できて、治療効果の評価に役立ちます。また、発作の引き金となる要因を特定できる可能性もあります。獣医師との相談時にも、この記録があると症状を正確に伝えられ、より適切な治療方針を立てることができます。

記録をつける際のコツは、発作が起きるたびにすぐにメモを取ることです。後でまとめて書こうとすると、重要な詳細を忘れてしまう可能性があります。また、薬の投与時間や量も正確に記録し、飲み忘れがないか定期的に確認しましょう。

てんかん治療は確かに長い道のりですが、適切な薬物療法と生活管理、丁寧な記録をつけることで、愛犬の生活の質を大きく向上させることができます。焦らず、諦めず、愛犬と一緒にこの道を歩んでいきましょう。

気になる治療費と通院頻度

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実際にかかる費用例

実際のところ、てんかんの治療費は症状の重さによって大きく異なります。

軽症で薬のみの治療の場合、月額3,000円から8,000円程度が目安です。これには抗てんかん薬の費用と定期的な診察代が含まれます。

中等症で薬に加えて血液検査などの定期検査が必要な場合、月額10,000円から20,000円程度を見込んでおくと良いでしょう。

特に重症化して入院治療が必要になった場合には、1回の入院で50,000円以上の費用がかかることもありますので、経済的な準備が重要です。

ペット保険は使える?

ペット保険に適用できるかどうかは、加入時期によって状況が異なります。てんかん発症前にすでに保険に加入していて、待機期間を過ぎている場合は一般的に給付対象となります。

ただし、てんかん発症後に新規で保険に加入しようとした場合、ほとんどの保険会社ではてんかんを対象外とする場合が多いのが現状です。

保険を検討する際には、必ず約款をよく読み、給付条件を確認することが大切です。

病院選びのポイント

神経内科を専門とする獣医師が在籍している病院を選ぶと、より専門的な治療が期待できます。また、緊急時にすぐに連絡が取れるかどうかも重要な判断基準です。てんかん発作はいつ起こるか予測できないため、夜間や休日でも対応可能な病院かどうかを事前に確認しておきましょう。

特に注意が必要なのは重積発作の場合で、これは命に関わる緊急事態です。かかりつけ医の対応時間を事前に把握しておき、近隣の救急対応可能な動物病院もリストアップしておくと安心です。

治療費の負担を軽減するためには、複数の病院で見積もりを比較したり、支払い方法の相談をしたりすることも有効です。治療を長く続けるためには、経済的な負担と治療の質のバランスを考慮しながら、愛犬にとって最適な医療環境を整えてあげることが大切です。

高齢犬のてんかんとの向き合い方

シニア犬に見られる特徴

シニア期に入ると、脳の機能変化や身体的な衰えに伴い、発作のパターンが変化することが少なくありません。特に6歳以上の犬で初めて発作が起きた場合、脳腫瘍や脳血管障害など、加齢に伴う疾患が原因となっている可能性が高まります。

持病との兼ね合いと対応策

シニア犬の発作では、けいれんよりもふらつきや意識混濁といった症状が目立つことも特徴的です。持病がある場合の注意点としては、心臓病や腎臓病などの基礎疾患があると、抗てんかん薬の選択や投与量に特別な配慮が必要になります。

肝臓や腎臓の機能が低下している高齢犬では、薬の代謝が遅くなり、副作用が出やすくなるため、定期的な血液検査が欠かせません。

家でできる安心サポート

まず生活環境の見直しが大切です。フローリングには滑り止めマットを敷き、段差をなくすことで、発作時の怪我を防げます。夜間の見守りにはベビーモニターが役立ち、別室で寝ている飼い主さんでも愛犬の異変に気付けるでしょう。

食生活では、抗酸化作用のある食材を取り入れつつ、薬の効果を妨げないよう獣医師と相談しながら食事内容を調整します。

高齢犬の場合、発作後の回復に時間がかかるため、安静に過ごせるスペースを確保してあげることも重要です。認知症を併発している場合は、環境の変化を最小限に抑え、規則正しい生活リズムを維持することで、発作の誘発を減らせます。

予防はできる?日常生活でできること

てんかんを完全に予防することは難しいですが、発作の頻度や重症度を軽減するための生活工夫はたくさんあります。

ストレスの少ない生活

犬にとってストレスとなる大きな音(雷や花火)や環境の変化(引っ越しや家族構成の変化)は、可能な限り避けるようにしましょう。普段からテレビや音楽の音量に配慮し、愛犬が安心して過ごせる静かなスペースを確保してください。

発作を誘発しない環境作り

食事の時間、散歩の時間、就寝時間を一定に保つことで、体のリズムが整い、発作の引き金となる要因を減らせます。

飼い主の心構えとサポート体制

飼い主さんの心構えとして最も重要なのは、過度に心配しすぎないことです。必要以上に神経質になるよりも、いざという時のために適切な知識と準備をしておくことが大切です。発作が起きた時の対応をあらかじめ家族全員で確認しておき、近隣の夜間救急病院の連絡先を目立つ場所に貼っておくなどの対策が役立ちます。

サポート体制は、かかりつけ医との連携を密にし、定期的に相談できる関係を築いておきましょう。最近では、てんかんの犬を飼う飼い主同士のサポートグループも増えていますので、そうしたコミュニティに参加して情報交換するのもおすすめです。何よりも、愛犬が穏やかで幸せな日々を送れるよう、温かく見守ってあげることが一番のサポートになります。

まとめ

愛犬のてんかんは正しい知識と適切な対応でしっかり管理できます。発作時はまず安全確保を最優先に、動画記録を取って獣医師に相談しましょう。特発性と構造的てんかんの違いを理解し、遺伝的要因のある犬種は特に注意が必要です。抗てんかん薬の副作用を理解した上で、発作記録をつけながら根気よく治療を続けることが大切。かかりつけ医と連携し、愛犬のQOLを守るために、今日からできることから始めてみませんか?
PETTENA編集部

PETTENA編集部は、ペットとその飼い主がより良い生活を送れるよう、専門的な知識に基づいた信頼性のある情報を提供するチームです。特に、ペットカートを中心に、安全で楽しいお出かけをサポートするコンテンツをお届けしています。